最近の中古の不動産市場では、安心・安全な流通・取引が行われるよう、さまざまな取り組みが業界全体で行われております。そのひとつがホームインスペクションです。
2018年には中古住宅の取引の際に、有資格者によるホームインスペクションの実施の有無について、不動産流通業者による説明が義務化されました。
今後、不動産を購入する方、売却する方にとってホームインスペクションは重要な検討ポイントになります。
ここではホームインスペクションを実施するメリット、診断の流れ、料金などについて詳しく説明しますので、ぜひ最後までご覧下さい。

藤本 尚也(フジモト ナオヤ)
同志社大学法学部を卒業後、IT系東証一部上場企業へ入社。
営業で半期営業成績1位を獲得するなど高い営業力を発揮する。
その傍ら、不動産にも興味をもち宅地建物取引士の資格も取得。
2つのマンションの購入実績があり、100件以上の不動産内見も実施し、
合計売却益は4000万円以上になる。
不動産×ネット広告の強みを活かし、日本最大手不動産会社のWebプロモーションの担当実績も持つ。IT業界・広告業界にも精通しており、「イエウール」「HOME4U」などの一括査定サイトを活用した売却が得意。
読者の皆様もすぐに実践できる不動産・マンションを高く売却するためのノウハウを解説します。
■所持資格
宅地建物取引士:(さいたま)第082721号
ホームインスペクションとは何?
ホームインスペクションとは、日本語では「住宅診断」などと呼ばれ、建物の構造や設備、外観、水回りなどを専門の技術者が検査するサービスのことです。
中古住宅の取引前などに行われることが多く、買主にとっては事前に建物の状態を把握でき、売主にとっては建物の瑕疵(欠陥)があった際に告知ができます。
ホームインスペクションは、不動産取引時のリスクを抑えるために重要な役割を果たしています。
目視で見える部分を確認する「一次検査(基本審査)」
ホームインスペクションの検査内容は、一次検査と二次検査の2段階に分かれています。
一次検査では建築士などの有資格者が目視で確認できる部分を中心にチェックが行われます。壁や天井、床、窓やドア、外壁、屋根など、建物の外観や内部構造が調べられます。
一次検査は基本審査とも呼ばれ、目に見える範囲で住宅の構造や状態を把握するために行われます。
目に見えない部分も確認する「二次検査(詳細調査)」
二次検査では、目に見えない部分を調べるため、特殊な機器や機材を使用して、水回りや電気設備、断熱材、基礎などの細部まで点検を行います。
詳細調査とも呼ばれ、より正確な情報を得るために実施されます。建物の構造や配置によっては、機材などが入らないこともあり、一次検査に比べると金銭的及び時間的な負担がかかります。
ホームインスペクションにかかる費用はいくら?
ここでは一戸建てやマンションによって異なるホームインスペクション費用について、詳しく解説します。
費用の変動要因や注意点についても触れますので、実施を検討中の方は是非参考にして下さい。
一戸建ての場合
一戸建てのホームインスペクションの費用は、住宅の規模や構造、年式、地域差などによって異なります。一般的には、中古住宅の場合は約15万円から30万円程度が相場とされています。ただし、建物の規模や複雑さ、立地条件などによっては、その金額より高額になる場合もあります。
マンションの場合
中古マンションを取引する際に行うホームインスペクションは、各専有部分のみを検査するのが一般的です。
エントランスや建物の躯体など共用部分を検査するには、検査の規模が大きくなり、費用及び時間の負担がかかるため、個人負担で行われることはまずありません。
マンションの専有部分の検査は、目視による検査が主で、殆どの場合一戸建て住宅よりは安く済みます。
一般的には、約10万円から20万円程度が相場とされていますが、詳細は実施するホームインスペクション業者に問い合わせてみてください。
ホームインスペクションは誰に依頼すればいい?
住宅のホームインスペクションは、国家資格を持つ建築士やホームインスペクターに依頼するのが一般的です。
建築に関する専門家に依頼することで、専門的な観点から建物の状態を正確に診断できます。
業者に依頼する場合は担当者の資格をチェックしよう
ホームインスペクション業者に依頼する場合、業者の担当者が適切な資格を持っているかを確認することが重要です。1級建築士の事務所でも、2級建築士が検査を担当するケースもあります。
資格を持っている担当者に検査を依頼することでより安心して依頼できるため、しっかりと確認しておきましょう。
不動産会社からの紹介
中古住宅を取引するうえで、売却の依頼する不動産会社からホームインスペクション会社を紹介してもらうこともできます。
不動産会社の住宅に瑕疵(欠陥)があった際に、隠蔽されてしまうのでは、と考える方もいるかもしれませんが、それは逆です。
不動産会社としては、取引の安全のためにホームインスペクションを行います。瑕疵が後から見つかってトラブルに発展するのを防ぐのです。
不動産会社によっては、指定する会社でホームインスペクションを行うと一定期間の保証を付けているところもありますので、担当者に確認してみてください。
ホームインスペクションを行うメリットは?
ホームインスペクションは1970年代のアメリカで誕生したと言われています。当時は多くの住宅が建築され、それにともなう中古住宅市場が形成されました。
その流れが少しづつ日本にも浸透してきており、ホームインスペクションの有用性が認められ、法整備にもつながってきました。
ここではそのホームインスペクションを行うメリットについて解説します。
不動産売却後のトラブルを防げる
ホームインスペクションは、不動産売却後のトラブルを防ぐためにも有用です。
売主が欠陥や不具合を事前に把握して修繕することで、引き渡し後に問題が発生することを防ぐことができます。
また、ホームインスペクションの報告書は、売買契約の条件に盛り込むことができ、買主に対する売主の説明責任を果たすことができます。
購入後のリフォーム代などを見積りできる
ホームインスペクションを実施することで、建物の構造や設備、外壁や屋根の状態などが明らかになります。
この情報を基に、買主が物件のリフォームや修繕にかかる費用をリフォーム会社に見積ることができます。
買主にとっては、事前におおよその修繕金額やリフォーム代が分かることは、中古物件を購入するうえでの不安の解消に繋がります。また、予算が分かれば住宅ローンに組み入れて、金融機関から借入することができます。
不動産の価値を担保できる
ホームインスペクションを実施することで、第三者機関による実施報告書を受け取ることができます。
特に不具合などが無ければ、建物の状態の良さを買主側にアピールできます。
仮に建物や設備の欠陥や不具合などの修繕を要する箇所が明らかになった場合でも、その対策方法が事前に把握できます。
買主へ安心感を与えられる
ホームインスペクションを実施することで、買主に対して、建物の状態が明確になるため、安心感を与えることができます。
また、買主が物件の状態を把握していることで、将来的な修繕費用などの予想も立てやすくなります。
ホームインスペクションを行う際の注意点は?
ホームインスペクションを行う前には、注意点を把握することが重要です。
まず、ホームインスペクションによって全ての瑕疵が見つかるわけではありません。
また、調査に必要な時間を予定よりも余裕を持っておくことも大切です。時間が足りなくなると、不具合があった際に対策をする時間が無くなってしまうからです。
注意点について、詳しく解説します。
全ての瑕疵がわかるわけではない
ホームインスペクションは、建物の状態を調査し、問題点を把握するための手段ですが、全ての瑕疵や不具合を見つけることはできません。
調査範囲はあくまでも点検口などからの目視がメインになります。建物や設備の一部を壊して内部を見るわけではありません。
また、調査機器を使う場合でも、建物と基礎の隙間など一定の空間がないと使用できないこともあります。
そのため、ホームインスペクションを行い取引をした後でも、実際に使用した買主より売主の責任を追及される、という可能性もゼロではないことを知っておきましょう。
またホームインスペクションでわかる瑕疵はあくまでも建物自体のものです。心理的瑕疵や環境的瑕疵などはわからないため、注意が必要です。
時間に余裕を持っておく
ホームインスペクションは、調査に時間がかかるため、予約をする際は余裕を持っておくことが重要です。
また、建物に瑕疵が見つかった場合、その修繕にも時間が掛かり、対策が遅れてしまうことも有り得ます。
住み替えなどで速やかに売却を希望する場合は、スケジュールの余裕を持って、手配をすると良いでしょう。
ホームインスペクションを行う流れは?
ここではホームインスペクションを行う際の具体的な流れについて、解説いたします。
スケジュール感をあらかじめ知っておくことにより、余裕を持った計画が立てやすくなることでしょう。
ホームインスペクション会社に問い合わせ
ホームインスペクションを行う前には、ホームインスペクションを専門に行っている会社に問い合わせる必要があります。
信頼のできる会社を選ぶには、インターネット上の口コミを検索したり、友人・知人から評判の良い業者の紹介を受けたりすると良いでしょう。
その際、料金や調査範囲、調査結果の報告方法について確認しておくことが大切です。
必要な書類を準備する
ホームインスペクションを行うためには、次のような書類を準備しておきましょう。
- 登記簿謄本
- 建物の設計図書
- 住宅/設備保証書
必要になる書類については、不動産取引業者が間に入っている場合は、事前に相談をしておくと良いでしょう。
これらの書類を事前に用意しておくことで、スムーズにホームインスペクションを進めることができます。
調査日の調整
ホームインスペクションの調査日は、売主や不動産会社、ホームインスペクション会社など複数の人が関わるため、調整が必要です。
特に土地や建物の状態が悪い場合には、追加調査が必要となる場合もあるため、余裕を持った日程を確保することが大切です。
ホームインスペクションを実施
調査日には、ホームインスペクション会社の調査員が不動産の内部や外部を詳しく調査します。
点検する項目は、外観・屋根・壁・基礎・内装・水回り・電気・暖房・換気など様々です。数時間程度で調査が終了し、後日、調査報告書の作成が行われます。
調査報告書の受け取り・支払い
ホームインスペクションが終了したら、調査報告書が作成されます。
この報告書には、調査内容を写真で確認ができ、修繕が必要な箇所や将来的に修繕が必要になる可能性がある場合は、その旨記載されています。
報告書によって不動産の状態や価値を正確に把握し、将来的なトラブルを予防することができます。
ホームインスペクションの報酬は、調査内容や対象物件の大きさなどによって異なるため、事前に実施会社への確認が必要です。
報酬の支払いが完了したら、調査報告書を大切に保管しておきましょう。
ホームインスペクションにかかる時間は?
ホームインスペクションにかかる時間は、調査する住宅の広さや構造、状態によって異なります。
一般的には、中規模の住宅の場合、2~3時間ほどで調査が完了します。
ただし、建物の状態が複雑な場合や、調査対象が大型の物件の場合は、検査に何日もかかることがあります。
また、調査後の報告書の作成にも時間が必要なため、受け取りまでに1週間程度かかります。
ホームインスペクションの費用は誰が負担する?
ホームインスペクションは、本場のアメリカでは原則、買主の負担で行います。
日本でも、買主がホームインスペクションを希望した場合は、買主が費用を負担することが一般的です。ただし、物件の所有者である売主が売却前に物件価値を担保するために、行う場合は売主負担で行う場合もあります。
まとめ:買主を安心させるためにもホームインスペクションを行おう
ホームインスペクションは、物件を購入する前に住宅の状態を確認するために非常に重要な手段です。
瑕疵が発見された場合は、事前に修繕をしたり、修復費用を査定額から差し引くたりするなどの対応ができます。
買主にとっては、ホームインスペクションによって住宅の状態を把握することで、安心して物件を購入できます。
そのためホームインスペクションの実施の有無は、中古住宅の不動産取引をする上では非常に重要です。