
山崎 晋一
同志社大学法学部を卒業後、国内最大手證券会社に入社。
入社後は金融・不動産仲介の知識を深め、宅建などの関連資格も所持。
資格や知識を活用し、多数の実務経験を積む。
その後、外資系の大手金融機関に転職し金融リテラシーを活用し、マーケティングに従事する。
豊富な金融・不動産の知識を活かし、不動産仲介・住宅ローンなど様々な記事を監修。
■所持資格
・宅地建物取引士:登録番号(東京)264164号
・賃貸不動産経営管理士
【ひな形】不動産売却で使用する売買契約書のひな形はある?
不動産取引時に使用する契約書には、特定のひな形などはありません。
公益社団法人の全国宅地建物取引業協会連合会や一般社団法人不動産流通経営協会などが不動産の安全な取引をはかるため、契約書のひな型を定めています。
しかし、特定の契約書のひな形を使用しなければ契約が無効になる、ということはなく、売主・買主双方が承諾をすれば、どのような形式でも構いません。
実施の取引では、不動産は高額になることが多いため、簡易な契約書ではなく、各専門機関が公開しているひな形をベースに宅建業者など専門家が作成します。
契約書に一般的に記載するのは次のような事項です。
- 売買物件の表示
- 売買代金
- 手付金の額
- 支払い日
- 支払い方法
- 土地の実測及び土地代金の精算について
- 所有権の移転と引渡し日
- 負担の消除
- 公租公課(税金)などの精算について
- 手付解除について
- 引渡し前の物件の滅失・毀損(危険負担)
- 契約違反による解除
- 反社会的勢力の排除
- 住宅ローン特約
- 契約不適合責任
その他にも対象不動産の特徴や契約内容に合わせた特約事項などが記載されます。
不動産取引で必要な売買契約書とは?
不動産取引において、売買契約書は必須の書類になります。
売買契約書には、売買物件の条件や価格、引渡し日など買主・売主間での取り決めたさまざまな事項が記載されます。
売買契約書は、売主と買主が合意した内容を確認するためのものであり、トラブルを未然に防ぐために不可欠なものです。
基本は不動産仲介会社が作成してくれる
不動産仲介会社は宅地建物取引業法で不動産取引時の売買契約書作成が義務付けられています。
そのため不動産仲介会社は、売買契約書を作成するための専門知識と経験を有しています。
不動産仲介会社は、売主と買主が合意した条件や取り決めを適切に反映させることで、両者認識の齟齬がない売買契約書を作成できます。
不動産売却における売買契約書の項目は?
不動産売却における売買契約書には、以下のような項目が含まれます。
- 売主・買主の氏名や住所、連絡先
- 売買物件の所在地、種類、面積、築年数などの詳細情報
- 売買価格や支払方法、引渡し日などの取り決め
- 登記方法や登記費用などの手続きに関する事項
- 売買物件に関する保証事項や免責事項
- 契約解除の条件や手続きに関する事項
これらの項目は、不動産仲介会社が作成する売買契約書には必ず含まれています。売主や買主が契約内容を理解するためには、売買契約書の各項目をしっかりと確認することが大切です。
その他の独自の項目を確認する
不動産の売買契約書には、基本事項以外にも取引ごとの特有な事項も記載されます。
特有な事項とは大きく分けて次の3つです。
- 不動産に関する事項
- 法律に関する事項
- 売主・買主に関する事項
不動産に関する事項とは、契約の対象となる不動産特有の事項です。たとえば、土中に埋蔵物がある場合や、擁壁に関する説明、隣地からの越境などについてです。
法律に関する事項とは、その地域特有の条例などについて記載します。条例によっては建築できる建物に制限がされることがあるためです。
売主・買主に関する事項とは、売主都合による対象不動産の引渡日の猶予や、買主の買い替え特例などがあります。
不動産売却で売買契約書を作成・確認する際の注意点は?
不動産売却において、売買契約書を作成する際にはいくつかの注意点があります。
基本的には不動産会社が作成を進めてくれますが、任せ切りではなく自分でも問題がないか確認をしておくと安心です。
以下に、重要な注意点をいくつか説明します。
売買条件や価格について十分に合意する
売買契約書には売買金額はもちろんのこと、その支払い方法、支払い期日などの条件も記載されています。
買主が住宅ローンを利用する場合は、仮にローンの融資承認が下りなかった場合は解約になる「融資特約」が設定されています。
「融資特約」は売買契約成立後も、解約になる恐れがあるので、買主だけではなく、売主もよく認識をしておくと良いでしょう。
売買物件の調査を十分に行う
売買契約書を作成する際の調査は不動産会社が主体となり行いますが、この調査は売主(所有者)もかかわることです。
不動産は目に見える箇所だけではなく、法律上の制限や目に見えない欠陥(瑕疵)があります。
そのため不動産会社は、物件の調査は現地調査、役所調査、売主(所有者)へのヒアリングを行います。
売主になった場合は、不動産会社による調査に協力し、自身の知っている情報は忘れずに告知するようにしましょう。
売主・買主にとって後のトラブルを回避するためにも、正確な契約書の作成が必要になります。そのためには事前調査が重要となるのです。
契約書の内容を確認する
売買契約書は売主・買主双方でその内容を十分に確認することが大切です。
契約書には、売買物件の詳細情報や売買条件、免責事項、責任負担割合など、多くの項目が含まれます。契約書の内容を確認することで、売主と買主の間でのトラブルを未然に防ぐことができます。
以上のような点に留意し、売買契約書の内容を理解することが大切です。また、不明点がある場合は、事前に不動産仲介会社や法律専門家などの専門家に説明を求めるとよいでしょう。
不動産売却で売買契約書作成までの流れは?
不動産売却において、売買契約書作成までの流れは以下のようなステップがあります。
ステップ1:売買契約書を作成する不動産業者を決定する
まずは、売買契約書を作成する不動産業者を決定することが必要です。
不動産業者は、売主と買主の間での交渉を仲介することで、スムーズな取引をサポートしてくれます。
不動産売買時の契約書は不動産業者が作成しますので、依頼する不動産業者を選ぶのは非常に重要です。
仮に、調査ミスなどで契約書に間違いがあり大きな損失が出た場合は、基本的には作成した不動産会社が責任を負います。
ただし、売主の過失や勘違いなどにより、事実と異なる情報を不動産会社に提供した場合、売主も責任を負う可能性があります。
そのため、売主は不動産会社から売却前のヒアリング時に分からないことは分からないと伝え、知っている事実があれば正直に申告しましょう。
ステップ2:売買契約書を作成する
不動産業者は、売主と買主の間での取り決めを元に、売買契約書を作成します。
契約書には、売買物件の詳細情報や価格、引渡し日などの取り決めが記載されます。
契約書の内容を十分に理解したうえで、売主と買主が記名押印することで、売買契約が成立します。
なお、売買契約書には、売主や買主の運転免許証などの本人確認書類が必要になります。
ステップ3:最終確認をして完成
契約書が完成したら、最終的に内容を確認して、売主と買主が記名押印します。
売主と買主は、取引後も確定申告などで必要になりますので、契約書は大切に保管しておきましょう。
まとめ:売買契約書は自分でも内容を理解しておこう
不動産売却において、売買契約書は売主と買主が取り決めた内容を正式に記録する重要な書類です。
売買契約書には、売買物件の詳細情報や価格、引渡し日などの取り決めが含まれます。売買契約書は、法的に有効で、トラブルが発生した場合には裁判などで証拠となる書類です。
売買契約書を作成するのは不動産業者ですが、売主・買主双方で内容を十分に理解しておくことが重要です。契約書の内容を理解しておくことで、後々のトラブルや不安を回避することができます。
以上のように、売買契約書は不動産取引において重要な書類であるため、売主と買主は自分自身でも内容を理解するようにしましょう。契約書の内容を正確に理解することで、スムーズな不動産取引を進めることができます。